花、荒野をこえて。/草野春心
 


 昨夜、
 光が花に成り
 音が花に成り
 匂いが花に成り、
 闇の膨らみの上、
 しとしと積もっていった。




  (そして、僕は僕だ。)



  円い定め、
  此処を囲みゆく。
  視るもの。其れは待たれ、
  聴くもの。其れは通り過ぎる。
  在が香を放ち、時が今になる。
  君への望を捨てた。希も絶も捨てた。
  だって、だって、余りにも夜だ。



  (時、今。)



  月光。
  其の残滓を浴びて、
  もはや蒼白き、部屋。
  滔々たる物思いは満ち溢れ、
  影として床を濡らす。
  三千世
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