少女と詩人/宮野
 


きみの輪郭がまだあわいときのこと
ぼくは涙をながしながらきみの詩を書いた
不器用なことしかできないから
瞼にうつるやわらかいきみの形とかそういうものを
一生懸命にことばにして紙にのこした

それはいけないことだとは思わなかった
でもきみにそれを読んできかせたとき
泣きながら書いたぼくと同じようにきみも
ゆっくりと涙をながした

こぼれた涙は詩を書いた紙をぬらして
きみをかたどったことばたちは滲んでいって
読めないほどにきみがくずれてしまったとき
きみは泣くのをやめた

ぼくは泣いた

きみがきみでなくなってしまったと
滲んだそれが黒を含んで透明でなくなって
しまったと
またきみが
ゆらゆらとどこへでも行ってしまえる、
所定位置なんかなくなってしまって
……



いま、きみの輪郭はまだやわらかく
ぼやけていて形はない

ぼくはまた無理にでも形づくろうとするから
きみはまた涙を流す






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