鮮やかさに、ヤラレタ。/田島オスカー
 



あいつの中指にはまっていた銀メッキの安い指輪を
ある日黙ってぽいと捨てた
ら、怒られたのでここにいる
だってあれはあの人からの贈り物だった

窓辺から聞こえていたのは近くにある中学校の野球部の声で
うざったくて閉めた窓に 指をはさんでしまった
あ、泣く、しかし思うほど泣けないのは昔と同じで
二階の窓 下を除いてももう指輪は見えなくなっていた

ここにいると 少し悪かったなと思ってしまって
それが悔しいので部屋には入らない
夕陽がもうすぐ沈みそうだ
野球部もそろそろ終わるだろう
そしてこのドアを一枚隔てて
今ごろあいつは中指を曲げたりしながら きっと不貞寝を
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