鼓動/楽恵
 
まで拍を刻む胎動を感じる

疾走する自転車の 細工された車輪の下で 
溜息の激流が少女の薬指から掻っ攫っていった魔法の指輪は 
地底探検のために掘り込まれた井戸へと滑り落ちて
世界を支配する月桂樹の王冠のために 地下水を銀色に刺繍している 

ドキドキ ドキドキと
乙女心の予兆は 春の訪れとともに来る 
砂風のハートビート 
ドラムとエレクトリックなベースそしてギター 
ロックンロールは悪魔の音楽 走り続けるあいだは息もつかない
深夜でも 明け方でさえ 

大地の生んだ青銅製の太鼓は 古代よりも氷河期よりも ときめいて  
指先も 首筋も 踵も  ずっと
地平線の彼方から耳元まで 
歩みを止めない 熱い動悸を感じている 

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