私が子供だと/前澤 薫
 
あなたが私のことを子供みたいだといふものだから、私は内心腹が立つた。
だが、少し経つと、成る程いい当てている処もあると感じた。
子供。
私は感情が細密な管を通して、妄りにだだ漏れしてしまうことがよくある。
子供が失禁するようなもの。
よく泣き、よく駄々もこねる。

だが、子供のそれとはやはり少し違う。
いいや、かなり違う。

子供はかわいい。
私はかわいくない。
子供は少しずつ世界を作り出していく。
私は無様な醜態を曝し、壊れていく。
子供は大人になるにつれ、光と影の間に現実を見出す。
私は光を影と読み違へ、影を真っ黒な闇と読み違へ、現実を理解し得ない。

私は鍛えるのに失敗した鉄のやうに精神が変形している。
噴出す感情の蒸気は中途で漏れ、上手く脳細胞の隅々にまで届かないのだ。
不能。
不全。
そして、私は言葉まで分裂して、纏まった詩を書くことも出来ない。


果たして私は子供たり得るか。
答へは歴然であろう。
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