忘却の波/結城 森士
 
のようなものを感じさせる白さだ
その女の子は、綺麗な白い肌をしていた
だが、俯きながら、前髪を前にだらりと流していたので
そのせいで、顔が分からなかった

私たちは、茶の間で長いこと向かい合って
食事をしていたような気がする
女の子は、一向に顔を見せてくれる気配がない
ただし、彼女の発するその雰囲気は
非常に澄んだ感性の持ち主であることを
印象付けさせてくれる

しかしそのとき俺は思った
これは、罠じゃないのか?
もしかするとこの子は、俺を騙そうとしているんじゃないか?

思い至った。
「女…?誰だ、この女は…」

目を開けると、そこに女はいなかった
そもそも、女と向かい合って座っているはずがない
私は布団の上で横になっているのだから

…わずか数秒の間に見た、奇妙な夢だ

まだ頭の中はスッキリと冴えていたが
その後、再び2時間ほど眠った


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