赤い砂漠/手乗川文鳥
白いのかもしれない全部
ざらざらしている、
ソプラノ歌手の不安だ、工場の煙突から湧き出る、
砂を噛んだ黄色い音が、中空で消滅していく、
私の陰は深緑、ウォータカラーの群衆を踏む、白い踝、黒いパンプス、
目隠し鬼に昼間はないのです、
実存主義の羊たち、
実在しない羊飼い、
濃霧、埠頭、トタン屋根、乱痴気騒ぎ、
誰かが腰に手を回す、私は誰かの胸を撫でる、誰かが後ろで誰かの首を撫でる、
何処に眼がある、何処に唇がある、触れなくとも分かるのに貴方が誰かも私が誰かも、
分かりはしない、霧笛、舌が舌を這う、
やはり此処もざらざ
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