◆ふゆを咲く/千波 一也
 


うすべにの桜を頬にほころばせ
ふゆを咲くのは
あどけない、春




さむい夜
機関車さながら息をして
笑っていたね
星くずの頃


転んだらふわふわでした新雪は
ただまっしろに
ただまっさらに




一年に一度の便り欠かさずに
いつか呑もう、と種まき続ける




凍てついた夜にも枝は枝として
耐えうる重みを
しなやかに、
聴く


守られてばかりでいると枯れてしまう
なにも守れずあだばかり咲く




目のいろも髪の硬度も透けてゆく
こおりのなかの
特殊な熱に




かなしくて、ときには汚れてしまっても
花という名は捨てられないね


ふゆはただ
こころの奥に凛として
だれかの春を
許してみせる










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