毒蜘蛛/甘雨
「どこまで脱げば交われるかしら」
下着も爪も髪も皮膚も
不必要なものとして棄てられる
歪みの中、唯一迷い無き輪郭をした
一匹の毒蜘蛛と対峙する
私は私を守るもの全てを廃棄して、すると
毒蜘蛛はかろうじて「愛」の言葉を口にする
それは滅びにむかう傾斜 優しい
毒は傾きを遊戯に変えてしまう
死に至るには足らず
覚醒(めざ)めるには甘過ぎるただの媚薬
恍惚の中、
「何一つ交われなかった」
私は徒労と皮膚と髪と爪と下着を拾い
毒蜘蛛は私に蔓延る「過去」となる
かろうじて、私は私の無防備を抱きしめながら
「過去」という致死量の毒に殺される
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