傷/美咲 華菜子
見えないはずなのに
そのナイフはひどく鋭利で僕の肉を貪った
シルバーとレッドの共演は
思いがけない悲劇となり
観客はひどく興奮して 拍手喝采
ただの幻 見えない液体と見えない刃物
だけど僕は感じている
痛みも
苦しみも
気が遠くなるような白い世界も
奇跡的に僕は絶命できなかった
ひどく痛む ズキズキと
痛み止めなんてものは気休め
医者は僕の体は助けてくれるが 心は放ったらかし
[大丈夫]なんて偽善の言葉を吐きかける
痛くて必死に叫んだ[生きたい]は
いつしか痛みから逃れるための[逝きたい]へ
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