家となりたい/ふるる
 
なんでもないことのように日々が
過ぎる
実際はなんでもかんでもが
おこる
どうしようもなく失くしたり
左足だけ見えなくなったり
足りないながらも戻ったりするが
一切の感情は描かれず
まるで立ち枯れてゆく 木
言葉は枯葉の必死さでぶら下がる
下がり気味の右の肩から芽が生える
しかし一切の感情は描かれず
一節の歌も歌われない
別れてゆくものの気配を
木はどうすることもできない
ただあのひとは見ているし
じっとじっと目をこらし
一部始終を見て
木にとって
見ることと描くこととぶら下がることはほとんど同じ
でしょうからね

そして年輪を重ね
皮を脱いでゆく

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