肉−Born−/影山影司
だ。息が詰まる。死んでしまう。
誰かが私の足を掴んで。力強く私を引き摺り下ろした。周囲を狭める壁面が無くなり、私は中空へ放り出された。身体を縛り付けていた綱は切られている。
見上げると燦燦と降り注ぐ電気の光。太陽の変わりに、ひり付く白い光の輪があった。
その瞬間、私は自らが何者であったかを思い出した。
私は軋む階段を上った。縄を結わえて作った輪に首を通した。
足元が崩れて、私は吊るされたのだ。
引き出しにしまっていたものを、そのままゴミ箱へ放り投げる。中にこんなものを入れていたのか、と驚いてはその存在を忘れるだろう。
私は、そのようにして、自らが何者かを思い出して、そして忘れた。今までのことも、それよりずっと前のことも、何もかもが全て消える。
そして、私は叫び声をあげた。
ここはあたたかい。
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