少年の苦悩/wheale
 
た。都会とは呼べず、だけど田舎でもないその街のことを君は憎んではいたが、本当は愛したかった。
いつか戻って来たいと本当は願っていた。

夜中はタクシーのランプが灯り、酔っぱらった男たちが女を抱いて歩いている。
そんな光景が見えても、決して派手ではなく、むしろこの街の平和さを象徴していた。
繁華街を歩くと、必ず友人と会ってしまうような狭苦しさが愛しくて君は思わず泣いた。


少年は走った。
振り返ると巨大な闇が襲ってくるので、後ろをみないように前だけをみた。

少年は走った。
もう彼の心は揺るがなかった。


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