呆日。/ヨルノテガム
 




 綾瀬クン、きょうは
 あの山へ行ってみようか

 気晴らしと気まぐれに
 若草山をふと指差した

 ―ハイ、。

 なんだキミ、行ったことあるの はじめてじゃないんだ
 ボクはまだ行ったことないよ
 見晴らしも、夜景も綺麗ですよ―っ
 へえ。
 へえ。(まねした)

 そして結局、行かなかった

 綾瀬クンの記憶をおしゃべりしている内に
 もう充分行った気になってしまった。
 替わりに喫茶店でコーヒーとパフェを食べた
 綾瀬クンが指差したのは古い知らない喫茶店だった
 暗い店内が少し明るくなった気がしたのは
 入り口の扉の上についたベルを
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