優しい嘘つき/前澤 薫
 

多くて、
二人してハーフーと
息をつまらせ
笑顔をつつきあわせながら
まあいいかと
つぶやきました。

そして
あなたは餅のような
ほおを私のそれに
ぺたっとくっつけました。

やはり忘れられない
のですね。

時間と空間が
一瞬でも似たような
ものになると
ふとあなたを
思い出します。

でもそれでも
次の電車に
吸いこまれて
あなたはここにいないのね
とつぶやく私。

あなたはきっと
優しい嘘つきだった
のね。
戻る   Point(2)