2月10日の雪のように/和歌こゆみ
 
かじかんだ手を
あたためてくれた人はとおく
冷えきった深夜の駅
まばらなひとたち
だれも私をしらない


わたしのことさえ だれもしらない


どんなにののしられても
それを愛におきかえて生きてゆけばよかった



それを手放してもひとりをえらぶ

ゆるしてほしいとは云わないわ




背が高くはない貴方
うしろから
首の辺りに腕をまわして
抱きしめられたそのときだけ
何処よりもふかく
しずんでいく稚魚のように
水面に漂う鳥たちにも似て









2月に降りしきる 今年最後のゆきをみながら
どこか遠くへと願いながら
バス停に佇んでいた
ただひとり
ずっと。







灯りの消えた家々のなかで
通り過ぎるわたしたちのことも知らず
どんな夢にねむるのだろう






ありがとう。
だけど
戻る   Point(7)