羅睺夜/木立 悟
呪いが呪いに接しては咲く
蒼を渇きに支配する
指の火口を巡る文字
岩に硝子の星を描く
咳音 空洞 ふたつの旗
熱水 痛み
しずくがしずくでいられる時間に
空は数度 空を終える
青緑と赤 白と黒
古い光がこがねになり
新しく近く銀に覆われ
光に病むものの衣に触れる
水の上の
水に接しない鳥 魚 笑み
蒼の円となり
ひとつにまわる
火の署名が聞こえくる
月のなかに立つものが
ひとりの響きを蒔いている
遠くはさらに遠くなる
捧げるものも
捧げられるものも喰い尽くされる
祭壇 偶像
血も皿も剣も火も
鏡に吹いた一息が
鏡のなかから出てこない
どこへもたどりつかない視線が
円の裏側を白く揺らす
人の暗がりを歩き疲れて
衣を重ね 衣を重ねる
至らなさ到かなさのかけらばかりが
無音のかたちに降りつもる
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