薬の効能/
前澤 薫
薬を嚥んで、
正気を保つ。
深い想いは消えゆき、
果たしてこれが
自分の本来の姿と
いえるのだろうか。
イメージはしぼみ、
闇・幻は消え失せ、
そして現実がありのまま
ここにあるのみ。
何もないことに
悲しむでもなく、
母の顔を見て
訳もわからぬ
笑顔をうかべる。
掛時計の秒針が
カチカチ刻まれていく。
運命(さだめ)を知らず、
生きている。
薬の束が、
白く輝く。
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