偽る人/非在の虹
 
古代ではしばしば吟遊詩人の虐殺が行われた。吟遊詩人の言葉は「水鏡より真実を語り、猿より虚偽を述べる」とされたからである。しかしこの事実は吟遊詩人の言葉を後代に書き記した文献から判ったのであり、とすると、「吟遊詩人の虐殺」そのものが詩人による捏造ではないか、という疑問も残る。ことほど左様に詩人は「猿より虚偽を述べる」のであるが、問題は何故虐殺か、であろう。

おそらく殺されたくない者は、殺される前に、殺されたと言いふらす事が最善であるのを知っているのだ。
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