愛人たち/吉岡ペペロ
 
おくではおまえの子が寝ている

いつつの子の眠りには

わたしたちの情事は聞こえていなかった

おまえの朱い下着は

すぐくしゃくしゃと棄てられる

おまえは風呂場にひざまづき

おれのものを祈るように含んだ

あらゆる粘膜とそのさかいめを

夜しらむまで煮詰めあう

いつつの子が見ていたならば

わたしたちは体ごと

泣いているように映っただろう

もう二度と会えないような気がした

いつもそんな目をして別れている
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