記憶が生むもの/エルメス
 
未来があるから、過去がある。過去が無ければ、未来は無い。


人間は、記憶する能力を持っている。記録ではない。記憶だ。

それは、時に、記録よりも曖昧なもので、時に、記録よりも鮮明なものとなる。


注目すべきは、記憶の役割だ。

一つは、過去を振り返ることだが、もう一つある。


それは、過去を認識するということ。

過去を認識することで、現在を認識することができる。

そして、未来をも認識することができる。


つまり、人間は記憶によって時間という概念を得ているのである。

もし、人間が一切何も記憶しない生命体であったなら、「時間」という概念は存在し
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