あの頃、僕らは/前澤 薫
 
坂を登ると、
公園に入る道へとつながる。

闇をつんざく白熱灯。
アスファルトが寒々しい。

コンビニで買った
カッターナイフを携えている。

あの男(ひと)たちに、
恋してもらえない自分。


ここは桜の名所。

かつて、
恋人と来たことがある。

花粉が飛んでいて、
腫れぼったい目をした
彼と歩いた。

桜のピンクと青い空、そして太陽の光が
射して、まぶしかった。


今、血の色に染っている。
樹は裸。枝は葉をつけていない。

顔に風が当たり、体を冷やす。
血が固まりそう。


セックスを思い出す。
あの快楽を思い出す。
[次のページ]
戻る   Point(1)