剥奪されて自由/川口 掌
 
加わっていく呼び名は
全部俺の物だ
増えていく呼び名のどれで呼ばれても
一先ず頭をあげて呼んだ相手を睨みつける
これが俺のライフスタイルだった


一時機
我が家の近くの虫や鼠が
どう言う訳かやたらと増えた
あっちの鼠を追いかけていると
目の前を虫が通り過ぎていく
こっちの虫を追い詰めた瞬間
脇を鼠がうろうろする
そんな事が多くなった
気が散って虫も鼠も捕まえられなくなる

俺の名前からハンターが消えた
気が楽になった
呼ばれもしないハンターをやらなくてもよくなった


なにかのきっかけで
次々に俺の技が消えていく
名前を維持するために
やっきになって働く事もなくなった
俺に清四郎と名づけた
父ちゃんもこの前にあちらに行った

何をやるのも自由になって
皆の心から俺が消えて
俺は解放されていく
名前を無くして自由気ままに
皆の心から
そして俺の心から
俺の全てが消える時
俺の姿も消えて
本当の自由を手にいれよう



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