大停電の夜に/かいぶつ
 
にばれないように
笑いをかみ殺して聞いた
あのラジオによって形成されたんだ
僕の送ったハガキが
初めて読まれたときのドキドキは
一生の宝物

僕があの町を離れて
もう何年経ったっけ?

こうしてる今もあの町で
大停電の夜に人々が
夜空を見上げたり
ラジオに耳を傾けているのかと思うと
灯りがあふれすぎたこの町に
憧れていたあの頃に戻れたら
幸せだな、なんて。

僕は電気を消して
ベランダに飛び出す
そしてボロボロのポータブルラジオの
アンテナを月に突き立て
周波数をあの頃に
合わせるのだ

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