斜塔/杉菜 晃
ピサの斜塔を見てから
頭の中が傾いてしまって
たえず修正しようとする意識が働いている
倒れない限り
傾けば傾くほどいいらしい
小説もしかり
詩もしかり
藝術もしかり
発想はピサの斜塔と似たようなものだ
傾き 歪み 錯綜している限りにおいて
それを修正しようとする意識が働く
文学の効用だ
藝術の効用だ
しかしいつしか
修正する方向にはいかなくなった
負のほうへばかり加速していくようになった
ゲームや軽薄な歌や音楽なんかは
はじめっから堕ちっ放しだ
ドラマにしてもしかり
世の終わりとは
こういった現象をさしていると思う
斜塔はいつか倒れるだろう
それを見た者の意識が
修正不能になった
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