斜塔/杉菜 晃
 



ピサの斜塔を見てから

頭の中が傾いてしまって

たえず修正しようとする意識が働いている

倒れない限り

傾けば傾くほどいいらしい



小説もしかり

詩もしかり

藝術もしかり

発想はピサの斜塔と似たようなものだ

傾き 歪み 錯綜している限りにおいて

それを修正しようとする意識が働く

文学の効用だ

藝術の効用だ



しかしいつしか

修正する方向にはいかなくなった

負のほうへばかり加速していくようになった

ゲームや軽薄な歌や音楽なんかは

はじめっから堕ちっ放しだ

ドラマにしてもしかり

世の終わりとは

こういった現象をさしていると思う

斜塔はいつか倒れるだろう



それを見た者の意識が

修正不能になった












戻る   Point(4)