装置としてのシルクハット/しめじ
 
に唇を這わせるあの女の薬指は麻疹だ素敵な毛抜きがおちているので、心臓を眺め続ける夕べです
舌先で春を捜している

舌を道路にばらまくと横断歩道の上で蝉が死んでいる
水色の三角フラスコの中
人差し指をずらっと並べた九段下に突風
真っ二つにされた哀しみに
真っ赤なセーターに身を包んだ銀色の鋏に舌先を乗せると夜はフラスコの底に沈みだす
傷口に舌先を
紙垂に巻かれた眼球が切ない
私は旅に出る
参道に腰を下ろした鮎に一滴のスコッチを
左手を抱いたまま眠る地蔵尊
降霊師とのセックス
祈りを捧げる家族の遺影
監獄の誕生と永久に終わらないミシン針に恋をした
遠い記憶を酒瓶に詰めて
影絵のようなロータスが線路の中で揺れている
レンガのように怒鳴り続ける遠雷とデートする
フライパンを振り続ける事で過去との合一をはかっています
ネクタイが切り刻まれて排水溝に流れて行く
そんなことを言って旅に出た水平線の上で踊るシルクハットの男たち
その記憶を頼りに
カタツムリばかり褒めちぎる噺家と家出する
アネモネを口渡しする磁場

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