私たちは夢の中で/石瀬琳々
 
夢の中で私たちは
幾度もくちづけを交わした
あなたの唇はいつも濡れていて
舌を入れると海の味がした
まるで水中深く落ちてゆく
立ち昇る泡が遠く遠く輪を描いて
はるかな岸辺へと


夢の中で私たちは
幾度も別れを繰り返した
つないだ指を一本ずつほどいては
見つめ合って遠ざかった
何も言わないで唇だけで別れた
さよならの形を試すようにしては
ぬくもりを確かめるようにしては


夢の中で私たちは
幾度も抱(いだ)き合った
あなたの鎖骨が光って夜を照らす
まぶしくていつも目を閉じてしまう
目を閉じれば潮騒が聞こえる
耳を澄ませば海流がなだれ込んだ
いつ
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