ふらちなよみの国から −わたしの詩人−/音阿弥花三郎
 
ふらちな黄泉乃国から来る男は
死んだ者を無理矢理叩き起こし 
不届き者の口からなにごとか聞こうとする

その行為 その汚らわしい行為に
足元から鳥肌起つ岸辺に立つ
ここは泉か 言の葉の埋もれる
奇妙な木々の隙間から覗く

黄泉乃国のおぞましさ
そのために捧げよう
先ず家族たち
祖母 
祖父 
母 


姉 


息子 娘 孫
身にまとっているのは経文か
祭壇に最後に登るのは恋人であろう

底で裁断を待つ季節たち
の横顔も見える
いくぶんやつれている

無意味なテクストを残し さて
黄泉乃国へ帰ろう
私は呼び起こした者
あるいは 呼び起こされた者
そのおぞましさ
汚らわしさ あさましさを衣とし
ひきつる悔恨を杖とし
哄笑を残し

(よみのことば読むべからず 読ましむべからず 盲目の者をして読ましめよ)
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