夜辺/木立 悟
這いつづけ
水にたどりついた樹が
土のはばたきを抑えている
それでも幾つかは
飛び去ってしまう
石も川も敬いも
大きさを失いさまよいはじめ
幸せもなく 不幸せもなく
はみ出した分だけかがやいて消え
ただあるがままの粉の冬でいる
あらゆる方向から小指にからまり
よろこびに浮かされる片方の手足
金属の雨のなか聞こえくる
畏れ うた 震え
畏れ うた 震え
降る雪のひとつひとつに
触れるたびに歩みは燃える
つむる目の内
痛みは灯る
つむる目の奥
背は揺れ動く
黒の前を過ぎるこがね
片方の目で追ううちに
曇の火
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