春の気配/川口 掌
 
の玄関脇に
繋がれていた野良犬達だけだ



この町の 山の麓で
何も知らない私は
縁側に腰掛け
やわらかく降り注ぐ
日差しと戯れながら
一杯のお茶を啜り
頂を目指す太陽を
目を細めて見つめる


主に茶色
所々に
木々の緑や岩肌の灰色
そして
溶け残った雪の白いのが
ちらちらと見え隠れする山肌に
新芽を食む
蟲を啄みにやってくる野鳥が
あちら から こちら
こちら から あちら

飛び交いだす



どこか
遠いところから聞こえてくる
ラジオの声は
尖閣諸島付近で発生した
非常に大きい
台風一号の進路について
何処へ行くとも判らない
と 告げる




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