35,000宴。/りゑ
 
或る昼下がり
ぴかぴかの床のあるデパアトにて
それは興った、ときいている

其処は漆黒のカウンター
わたしの脇には、わたしの彼女
カウンター越しには、あの彼女

ぬるうりとした そのクリーム
あまりに感触がよひものだから 

つい   あっ

声が漏れ 
振り返ると彼女もまた

           ああ と...

そんな我々をみつめて微笑する
深紅のルージュをさした、その彼女が宣ふ

「何故そんなにイイか、

           わかる?」

間髪入れずに深紅の彼女

「それはね

     
   【三万五千円】 

            だから!」

その一言に

     あっ、ああァ

と、ブリッジまがいに仰け反って
昇天した我々もまた

深紅のルージュをさしていた



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