火の森/音阿弥花三郎
どこにある」と訊ねると 「ここからなら近い」と言う。私はヘリをそこに向けた。しばらく海上を行くと 空に向かって逆巻く黒煙が見えてきた。規模の大きい山火事のようで、自然と私の鼓動は早くなっていた。
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父の言う通りだった。それは島であったが 島を覆うすべてが火炎となっていた。炎が木や草の形をまねて燃えているのだった。針葉樹のような火や 広葉樹のような火や 下草の形をしているが火であるものが 島のごく一部の岩場や砂浜以外すべてを覆っている。やがて夜になった。島の上空だけ夕焼
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