リリーフ/れつら
けれども居るんだ、奴らは。いつもそこに居る。君の隣にいつも居るけれど、だが、よく考えてくれ。奴らも振ったり振らなかったりする。怖いんだ、風を切るのが、手もつけられない速さに身体が持っていかれて、空を泳ぐのが。ぼくだって怖かったさ、だから、ちゃんと受け止めてもらえるようにしておくんだぜ、高く、高くだ。
よく見てくれよ、ぼくはもう無理だ、腕がない。飛んでっちまったんだ、向こう側に。吹っ飛んだ腕はそのうち地面に落ちるだろう。砂埃で汚れて、壊死してしまっている。サインが出せないんだ、左手はグラブがあるから。グラブを外せばいいって?無茶言うなよ、球が受けられなくなるじゃないか。あんまりぼくの楽しみを奪ってくれるなよ。君の球は増えるんだ、何十個、何百個、何千、何万。手伝わないといけないからね、ぼくも、魔物になるんだ。球拾いをするから。サインを、頼んだぜ。上げられるところまででいい。高く、高く。
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