洪水 −雷鳴の方角−/音阿弥花三郎
 
粘土と唾液で造られた都市から悪臭が漂って来る
鼻の詰まった男達が希望を語り合っている
酷く発達した上腕筋
愛撫はハンマーの一殴りだ

雷鳴の方角を探れ  ひび割れた夜空の
耳垢だらけの男達が音楽を聞こうとしている
鬱勃たる大臀筋が振動する
下敷きになった女達は耳を塞いでいる

その口を閉じろ
涎は臍まで流れている
歯だけが嫌に若々しい

その耳を洗え
女はとっくに死んでいる
洪水はすでに押し寄せている
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