桜の森/瀬田行生
えてくれない
似たような気が一つ一つ並んでいる深い森
木の一つ一つはよく見ると個性がある
それはよく見ないとわからないけど 確かにある
私たちがわかるのは 木の中身じゃなくて 木の外見で
これは人間と似てる
もしかしたら 一つ一つの木は私たちそれぞれで
それぞれ 個性とかオリジナルとか言ってるだけで
外の世界から見れば 左の人と同じ格好してるのかもしれない
森に入って しばらくすると どうしようもない不安に
取り付かれるのは 「そのこと」に気がつきそうになるから
夏の茂る新緑の中
深い森
日の光もあまり届かないほど茂ってる その日
歩いて 歩いて 歩くと
やがては
深い森は 緩やかな林になって それから広々とした場所に出る
秋になると 葉 枯れて
冬になると 雪を迎える
春になると 花を咲かせ
夏になると 葉を茂らせる
全ての木は
それぞれの季節で自分らしさを咲かすけど 私たちには届かない
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