桜の森/瀬田行生
夏になると 春色づいてた花は散り
青々と茂る緑の木に変わる
木は二本 三本と増えていって
林になる
林がたくさん集まるといつの間にか
森になる
コンクリートの社会に住む現代人は
目印となる建物や番号のついた国道を
基準に目的地を目指す毎日
森に目印はない
ただ
似たような木がたくさん並んで林になって
ただ
似たような林がたくさん集まって森になるだけ
何年か前に森林浴が流行したけど
森は静かにそこにあるだけで 特に何をしてくれるわけじゃない
けれど
森に入るとなんだか落ち着く
でも そのうち 酔う
一人ではいる森林浴は 地図など何の安心感も与えて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)