空に伸ばした手は水面を破り、/百瀬朝子
 
騒ぐ鼓動が駄目だと叫んでも
はぐれた心 繋ぎとめておきたくて
涙を流してすがりついた
醜いその姿をはずかしむより
失うことを怖れて
私は空に手を伸ばす

掴んだ手の内が空っぽでも
夜は静かに音も立てずに明けていく

欠けたものをそのまま取り戻すことはできないから
欠けたものを補う何かを求めるんだ

そして私は溺れてゆく
息継ぎも泳ぎもできないくせに
かえりみないでダイブする
空に伸ばした手は水面を破り
そして
私は溺れてゆく
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