春に/黒田康之
散ることを急かされている梅の花よ紅梅なれば君も紅さす
公園のわきの草木は繁茂してふくよかなりし君と寝転ぶ
温かい君のからだを引き寄せてただ君の手の冷えたるを知る
色白き君が寝転ぶ真昼間は暖かである君とけるほど
遥かなる山の稜線は君の乳房だと抱き起こす今ただ実感す
白き手は冷えたりしまま汗ばみて私の肌を染め上げていく
春向きのコロンの陰の君の香が春の草木と私を包む
君抱かぬ日を作るのは愛であり不義なるからではないと目を閉ず
春草を君は踏みしむ香り立つその足跡をいかにせん吾
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