クラムボン/笹子ゆら
『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
そうして流れ 流れてゆくのは
溢れて燻ぶる確かな存在
それをマボロシと戒めても
別に世界は変わりないというのに
短い瞬きの間に 生まれた泡(あぶく)を
わたしは眼差しとして捉えている
燃えさかる前に 消えてしまえと願うから
『それならなぜクラムボンはわらったの。』
『知らない。』
円熟していくのを忘れて
青臭いままの自分で認めさせた
それでも苦しい息を上に残すのは
きっと 贖罪の証 なんて
『クラムボンは死んだよ。』
『クラムボンは殺されたよ。』
もう 覚えてはいないのかと
尋ねる理由を尋ねてほしいのに
いい加減潰れるよ
光の網はゆらゆら、のびたりちぢんだり、花びらの影はしずかに砂をすべりました。
わたしの幻燈の火が落ちて 終わりにしよう
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