研究「緑川びの」/生田 稔
石の前に
手向けられた
枯れた一輪の花
念じても
無駄は無駄
懐に忍ばせた
遺書代わりの借用書に
思想の文字が消える
今の彼女の詩とはだいぶかけ離れていると一見思えるが底辺でつながっている。つまり社会の悪に立ち向かう詩である。そういうのはおおげさか、思想が死んでしまったこと、思想は遺書代わりの借用証にすぎない。詩人は詩の結びに自分の主題を必ずと言っていいほどにおわす。この表現は、私などに言わせると「神は死んだ」という哲学者たちの思想に結びつく。緑川さんは実存主義といっていいほどのことをこの詩に含ませている。
ながながと拘泥することもない、このぐらいにして次だ。
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