呆日/ヨルノテガム
 






助手の綾瀬クンの横を通り過ぎると
イチゴの匂いがする、するよ と言ってやると
今朝沢山食べてきましたからと素気なく答える
へえと言う間に うっ嘘ですよ―っと元気に
イチゴの入ったビニール袋を持ち上げて指差した
季節ですからネ 甘いんですよ―っと薦めながら
手渡してくれる イチゴだねぇと言うと
粒が大きいんですよ―っと自慢げにした

その日の昼、ようやくウトウト睡眠をとっていると
近頃行ってない競輪の夢を見る
9車スタート位置に並んだ選手の真ん中、5番車だけが
イチゴ人間なのであった イチゴに手足が生え平然と
周回を重ね見事1着をさらっていく
捲り
[次のページ]
戻る   Point(5)