美しい雪は/黒田康之
 
美しい雪は 燦々と降る
野にも山にも私の肩にも
佳き人の屋根にも
悪しき人の庭にも
慈しむように輝いて降る

美しい雪は 温かく積もる
芽吹く命を見守るように
枯れ枝の先にも
苔生す巌にも
抱きしめるように温かく積もる

美しい雪は 静かにとける
柔らかい命を潤すように
街も山も
鳥にも草にも
泥まぬようにするりととける

けれど花は育ち行く花は
何を頼りに咲けばいいのだろう

時は春
命咲く春
花は 花は
力の限り
空に向かって咲き誇る
時は春
命茂る春
木々は 木々は
思いの限り
空に向かって枝を張る



寿ぎの春は
流れるように訪れながら
雪の眠りを頼りに咲く



(この詩を、私に秘伝の餃子をご馳走してくれ、いつもあたたかな笑顔で迎えてくれた、素敵なお姉さんに、この度の眠りの安らかならんことを、また朗らかならんことを祈りつつ捧ぐ)

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