生かされていることへの感謝としての宗教/レヴィナスの宗教哲学−「存在の彼方へ」を読んでみる16/もぐもぐ
性は大いにある。なぜ殺さないのか。そこに理由はない筈である。けれども私には殺せない。その殺せなさの中には、私が忘れている間に経験してきた、自然/他者の威力への服従ないし感謝が、そこに含まれているのである。これはすべての宗教が駆使せざるを得ない、基本的なロジックを、ある意味先鋭にえぐり出したものと言えるだろう。ホッブズ的・日常的な合理性の立場からすれば、かなり異質な、或いは異様なものでありうる。けれども、宗教哲学としては、このレヴィナスのロジックは、かなり根底的なところを突いていると言うことが出来るのではないだろうか。
「あなたが他人を殺さないのは、あなたがこれまで他人から生かされてきたからだ
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