生かされていることへの感謝としての宗教/レヴィナスの宗教哲学−「存在の彼方へ」を読んでみる16/もぐもぐ
さであるが、痕跡はかかる顔のうちで描かれると共に消失し、この一種の抑揚をつうじて、<超越者>の様態そのものを語るのだ」(p44))。「痕跡」とは、既に過ぎ去ってしまった何者かの「跡」であった。「顔」は、様々な命令を語る「顔」は、私が忘れてきた記憶不可能な諸事実の「痕跡」である。「殺すな」「生かせ」という命令は、私がそれまで、意識しないままに、無数の諸力(自然/他者)により「生かされてきた」という事実を反映している。意識には由来しない、「殺すな」「生かせ」という命令を聞くことで、私は、私がそれまで忘却してきた、私自身が世界に身を委ねてきた、世界によって生かされてきたという事実を、そしてそれに対する報
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