うたう/かんな
 


突然の曇り空が思いを隠したら
どこからか蒸発したなみだは雲となり
しだいに落ちてきそうな上空を見つめる
この世界のどこかで握られた手と手が描く
幸せという透明な思いはあてもなく
誰かになぞられるのを待っている

雲の切れ間から現れた光の波にのる
どこかで手と手をとったふたりがいたなら
なぞられる形はあなたが想像してほしい
傾きはじめた太陽と出逢った白い月は
寄りかかっても交わらないから
きっといつまでも一緒にいられる

夕やみに包まれた空の下でうたう
そんな時だからやさしい言葉を
口ずさみながら口ずさみながら
見つからないから大切なものがある
空に輝く星をひとつ手に取る
そんな真似をしては掌をそっと見つめる
失わないものなどないけれど
消えない思い出がひとつ
星になった


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