スイッチ/たもつ
結婚したてのころ
奥さんがバスンバスン布団を叩く音を聞いて
親のかたきじゃないんだから何もそんなにまで
なんて思ったけど
十年目に
「布団は親のかたきなの」
衝撃の告白
親のかたきにくるまれ
毎日寝なければいけないことの痛み
その痛みに十年間気づかなかったことへの後悔
告白を終え、すっきり涼しげな奥さん
崩れていきそうなものを食い止めようと
ぼくはオロオロするばかり
とりあえず
「いつも美味しいご飯をありがとう」
と言って
手当たり次第にスイッチを押してみるものの
どれもこれも決まったところにしか繋がっていない
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