他力本願。/(悪)
普段は殆ど
目もくれない
携帯電話
(というか俺は基本的にこの機械を好かんのだ)
の中の
繋がるか
繋がらないか
今は
分からないほどに
古びた電話帳に
刻まれたままに
なっている
幾ばくかの
メールアドレスを
削除しないのは
この端末を持ってから
一度も
俺の宛先を示した記号を
気紛れに変更しないのは
いつか
不意に
アイツから
舞い降りるやも
分からない電信に
ほんの一抹の期待を
抱いているから
なのかもしれない
その時俺は
未熟なあの頃に
言い切れなかった
本音や
或いは
謝罪の言葉を
うっかり
けれど
今なら上手に
この嘘ばかりを紡ぐ
唇から
ほんのひとかけらでも
零す事が
できるだろうか
.
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