アカデミー賞ノミネート「おくりびと」に見られた象徴手法と音楽の強さ/里欣
 
納棺師の仕事は、死者の人生に向かう礼儀であり、その礼儀はまた善意の愛であることを、スクリーンの中で死者の親族を改めて感化し、スクリーンの外で世界中の観客に共感を呼び、いろいろ映画祭の観客奨をゲットしてきたのは、滝田洋二郎監督がおっしゃった「極めて日本的な映画だが普遍的なテーマ、死」だけではなく、たぶん注目に値するのは映画に多用された象徴手法と音楽効果もあろう。
 本木雅弘の憂いな目つき、主人公の名前「大悟」、解散する直前に楽団で演奏したベートーベン第九、人生の低音を象徴するチェロ、子ども用のチェロを田舎の野外や古い家で演奏しているのになぜか楽団よりも音楽家の尊厳を感じさせ、捜せばいくらでも見つかる生活のティーテル、小道具などにちりばめた人生や気持ちの象徴と、久石譲の音楽は、この作品に芸術性とエンターの強さを併せ持たせたのではないかと感心する。

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