Petloss/シリ・カゲル
とが出来たのだろうと、偶然のめぐり合わせというものを呪ったこともありました。でもそんな「もし」はあり得ない話です。私たちは最後にこう気づきました。リディアナは最後まで私たち夫婦のリディアナでいてくれた。それで充分なのです。
あなたの猫の不幸は心が痛みます。心からお悔やみ申し上げます。
あと四ヵ月もすれば、この凍てついた土地にも春がやってきます。何かを失った者にも、失わなかった者にも、春は平等にやってきます。私たちのように残された者たちは何よりまず生きなければいけません。人々は新しい春をとても心待ちにしています。
追伸 エルロイのことは覚えています。彼も私たちと同じようにリディアナのことを可愛がってくれました。
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なつきはさめざめと泣いた。明かりを消した書斎の中で、モニターに浮かび上がった英文の文字が次第にかすんで見えなくなった。徐々に閉ざされる視界の中で、なつきはもう戻っては来ないもののことを考えていた。
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