置き文/佐野権太
 
堅い梢から
白い気泡がぷつぷつと生まれて
二月の空に立ちのぼる

それは
君の唇からもれる
小さな温度に似ていて
僕の尾ひれを
とくん、と春へかたむける

ふらりと現れて
はな先で水草をかきわけ
また静かに回遊してゆく
遥かな人よ

元気でいます、と
つないで
いまごろの君が泳ぐ
水空を思いやる

春の方向を示した
ゆびのサイン

果実をひとつ、ふたつ
添えておくよ






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